私たちがウイルスに感染すると、
体に備わっている免疫機構は
そのウイルスに対する抗体を作るなどして
ウイルスを退治してしまいます。
そして、その後は、免疫機構がそのウイルスのことを
記憶していて、再びそのウイルスが体内に入ってくると、
いちはやく退治してしまうので、二度とそのウイルス病に
感染することはなくなります。
ですから、病気の原因となるウイルスが体内にすみついて
持続感染することはないと考えられてきました。
ところが、B型にしてもC型にしても、肝炎ウイルスは
長期間にわたって肝臓にすみつき、
慢性ウイルスに感染しているにもかかわらず肝炎を起こします。
また、無症候性キャリアの人たちは、発病しないでいます。
これまでのウイルス病についての知識では考えられないことが
起こっているわけですが、これはなぜなのでしょうか。
B型肝炎の場合は、成人が感染すると2~6ヶ月の潜伏期間をへて発病し、
1ヶ月くらい症状がつづき、発病から2~3ヶ月で回復します。
そうして、B型肝炎ウイルスに対する抗体ができて、
二度とB型肝炎になることはありませんし、
慢性化することもありません。
ところが、かつてはB型肝炎ウイルスを持っている
(HBe抗原陽性の)母親から生まれた赤ちゃんは、
出産の前後になんらかの機序で母親の血液が入って感染し(母子感染)、
その80%はウイルスの持続保有者(キャリア)になりました。
赤ちゃんはまだ免疫機構が完成していないために、
B型肝炎ウイルスを異物とは認めることができず抗体もできないために、
そのまますみついてしまうものと考えられています。
また、肝炎ウイルス自体は人体に対して害をするわけでありませんから、
ウイルスがいてもなんら症状は出ないのです。
このようにウイルスを持っていても症状がない状態を
無症候性キャリアといいます。
ところが、成長していくうちに、どこかで免疫機構が
B型肝炎ウイルスに気がつくと、ウイルスを排除しようとしだします。
ウイルスは肝細胞にすんでいますから、
ウイルスだけでなく肝細胞もいっしょに攻撃します。
その結果、肝細胞が破壊されて肝炎が起こるわけです。
免疫機構の攻撃が徹底していて、肝炎ウイルスを完全に
退治してしまえば、それで肝炎はおさまります。
ところが、ウイルスが少なくなると攻撃をやめてしまって、
またウイルスがふえると攻撃をするということが
繰り返されます。これが「慢性肝炎」です。
こうして、肝炎が持続的に起こり、肝細胞の破壊と再生が
繰り返されるうちに、肝臓の中の線維成分が増殖して
肝硬変になるのです。
また、肝細胞が再生するときに、遺伝子に変異が生じて、
肝臓がんが発生するものと考えられます。
一方、C型肝炎はウイルスの感染力が弱いので母子感染はほとんどなく、
あってもほんのわずかだろうと考えられています。
ところが、C型肝炎ウイルスは成人になってから感染した場合でも、
抗体ができてウイルスを排除できるのは40%くらいの人たちで、
残りの約60%の人たちはそのままウイルスが居すわってしまい、
持続感染者になってしまいます。
これらの人たちはウイルスと免疫機構の闘いが持続し、
慢性肝炎になってしまうのです。
C型肝炎の場合は症状があまり強く出ないので、
急性肝炎になっても知らずに経過する人もいますし、
慢性肝炎の状態になっても気づかずにいる人も少なくないようです。
慢性肝炎から肝硬変や肝臓がんへと進むメカニズムは、
B型肝炎と同じです。
⇒ガンを完治させるための5つのルール